カメラのシャッタースピードの測定(デジタルオシロ+レーザーポインター)

フィルムカメラ

クラシックカメラのシャッタースピードを、デジタルオシロスコープとレーザーポインターで、なるべく簡易的に、安く(6000円くらい)計測する方法を考えたので、紹介します。

背景

クラシックカメラ好きにとって、気にはなるけど手が出しにくいのが、シャッタースピードだと思います。
というのも、古いカメラは油切れなどで、シャッタースピードがずれていることが多々あります。
しかし、ばらして注油するのも大変だし、わざわざ修理に出しても結構なお金がかかってしまいます。

フィルムのラティチュードは広いので、シャッター速度が多少ずれていても何とかなるのも事実ではあります。ただ、撮影者としては、心のどこかで気になっていて、本当にドンピシャの露出で撮れているかを確かめたい と思うものではないでしょうか。

私もそんなことを考えてやり方を検索していたところ、以下の記事を発見しました。

3000円くらいで正確にシャッター速度を測りたい

https://tpcbtw.hatenablog.com/entry/2020/04/17/215613

この記事はよくできていて、専門的で数万以上はすると思うオシロが、実は簡易的なものならアマゾンで安く買える(3000円!)というのがミソです。実際に私も真似してやってみたところ、見事測定に成功しました。

しかし、計測はできたものの、以下の二つの難しさを感じました。

①計測系のセットアップが難しい
この計測を精度よくするには、光源とフォトセンサーの位置調整と保持が重要になりますが、光源に懐中電灯を使うと、これに結構手こずります(詳しくは後述します)。
②オシロスコープの使い方が難しい(特に初心者には)
オシロを使ったことがある人なら簡単ですが、初めての人はオシロの使い方でハードルを感じてしまうと思いました。私は以前に少し触ったことがあったので何とか出来ましたが、操作感を思い出すまでに時間がかかりました。

そこで色々試してみたところ、光源にレーザーポインターを使うと、計測系のセットアップが簡単になることがわかりました。そこで、レーザーポインターを使った手法を紹介しつつ、オシロの使い方についても簡単に説明する、初心者向けの記事を作成することにしました。

*ただし、この手法はレンズが外れていることを前提にしています。レンズ一体型のカメラの場合は、むしろ懐中電灯のほうがやりやすいかもしれません。

必要なもの

このやりかたの原理は、基本的に先駆者様と同じで、「シャッターを通してフォトダイオードに光を当て、電圧の変化をデジタルオシロスコープで読み取る」というものです。必要なものは以下の四点です。

①レンズを外した状態のカメラ

②デジタルオシロスコープ

③フォトダイオード

④レーザーポインター

①レンズを外した状態のカメラ
このやり方では、カメラのレンズを外した状態にしてください。レンズがついたままだと、カメラの微妙な位置の違いによってレーザーの照射位置がずれるため、懐中電灯より調整が難しくなると思います。

②デジタルオシロスコープ
私は以下のデジタルオシロスコープを買いました。安いですが機能的には十分だったと思います。
↓アマゾンリンク(価格:3,660円 2023/11/17時点)
デジタル オシロスコープキット 2.4インチTFT ハンドヘルド オシロスコープ DC9V電源 0-200KHz 5mV/Div – 20V/Div感度 クリップケーブル プローブ 組立完成品

今調べてみると、もう少しちゃんとしたもの売っていたようです。今後も別用途で使うなら、この辺りを買ってもよいかもしれません。
↓アマゾンリンク(価格:8,200円 2023/11/17時点)
DSO-TC3 オシロスコープ 500kHz帯域幅のポータブルハンドヘルドオシロスコープ 3 in 1トランジスタテスター オシロスコープ

③フォトダイオード
フォトダイオードについては、私も専門ではなく正直あまりよくわかっていません。応答定数(どれだけ瞬時に応答するか)が大事な気がしますが、アマゾンの汎用品にはそこまで書いてないし、(書いてあっても私ではよくわからない気がするが)、エイヤで買ってみたのが下のリンクです。とりあえず使えていたと思います。
↓アマゾンリンク(価格:655円 2023/11/17時点)655
SEAFRONT シリコンフォトダイオード、2DU3シリコンフォトダイオード可視光検出器シリコンフォトセルフォトレジスタ

④レーザーポインター
レーザーポインターは低出力でも十分です。家にあればそれでもいいですが、私はなかったので、以下の猫のおもちゃ用のレーザーポインターを買いました。たぬきにも使えます。
↓アマゾンリンク(価格:1,180円 2023/11/17時点)
Newsmy 猫 おもちゃ 7in1多機能 LEDライト USB充電式 コンパクト 猫のおもちゃ 日本語説明書付き (1pcs)

計測方法

用意したものを、以下のように配置します。
*ハサミとかいろいろ置いてありますが、単に高さ調整のためのスペーサーです。

配置の順番としては
(1)フォトダイオードにオシロをつなぐ
フォトダイオードは極性があるので、プラスとマイナスに注意してください
一般的に線の足が長いほうが+のような気もしますが、逆につないでもそうそう壊れることはないので、つないで信号が出なかったらプラスマイナス逆にすればよいと思います(多分)。

(2)レーザーとフォトダイオードの位置を調整する
レーザーポインターをオンにして、フォトダイオードに照射するように位置調整します。
この時、レーザーの高さはカメラのシャッター部に合わせておいてください。
また、レーザーとフォトダイオードの間の距離*はカメラ一台が入る分以上に空けておいてください。

*このスペースが狭いとシャッターをチャージしたりシャッターを切るときにカメラが動いて、レーザーやフォトダイオードにぶつかることがあります(そうすると調整がやり直しになる)。
懐中電灯だと距離が開くほど光が弱くなるため、このスペースがきつきつになり、ぶつけやすくなります(あるいはカメラ側にセンサーや照明を固定するしかない)。しかしレーザーだと距離減衰がないため、このスペースを十分に確保でき、作業がやりやすいというメリットがあります。

(3)カメラをレーザーとフォトダイオードの間に置き、シャッターを切ってオシロの設定を調整する
シャッターを切ってフォトダイオードの電圧変化*を確認しながら、トリガーレベルやdivの設定をします(オシロの使い方は、次の章で別途説明します)。
*ここでも、レーザーを使うことで信号強度が強くなり、多少部屋が明るくても測定できますし、トリガーレベルの設定もやりやすいです。

(4)シャッタースピードを変えながら、オシロで露光時間を計測する
トリガーで取得したオシロの信号をみて、露出時間を計測します。

オシロスコープの使い方

今回の計測において、オシロスコープで必要な知識は、以下の3つです。
これらを知っていれば、この測定は何とかなると思います。

  • AC/DC
  • Div
  • Trigger

・AC/DC
ACは交流、DCは直流の意味です。今回のフォトダイオードから流れるのは直流ですので、DCを選択してください。ACモードのままだと信号が検出できないため、注意してください。

・Div
divはdivisionの略で、縦軸(今回の場合は電圧)と横軸(時間)のスケールを調整するために使います。以下の記事の説明がわかりやすいです。
縦軸のDivは信号強度に応じて設定し、横軸のDivは計測したいシャッタースピードに応じて設定します(例えば、1/100なら10msなので、Divを2msにすれば5マス分の信号になる)。

 オシロスコープ(オシロ)の表示画面にある約1cmの大きな目盛り(線)を1ディビジョン(division)という。(中略)たとえば時間軸の設定を100ns/divにすると、 横軸1目盛りが100nsになるように表示される。このように1目盛りをdiv(またはDIV)と表記する。時間軸と電圧軸の設定は「10mV/div」のようにオシロの画面のどこかに表示される。divisionは「分割」の意味。

https://www.techeyesonline.com/glossary/detail/div/#:~:text=%E3%82%AA%E3%82%B7%E3%83%AD%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%97%20(%E3%82%AA%E3%82%B7%E3%83%AD)%E3%81%AE%E8%A1%A8%E7%A4%BA%E7%94%BB%E9%9D%A2,%E5%88%86%E5%89%B2(8div)%E3%81%8C%E5%A4%9A%E3%81%84%E3%80%82

・Trigger
オシロでシャッターが開いた瞬間の電圧をみるとき、普通にみていると(数msの話なので)あっという間に通り過ぎてしまいます。そこで使うのが、トリガーです。トリガーとは、信号が一定以上の変化をしたときに、その瞬間を記録する機能のことです。
今回の場合は、フォトダイオードに光が当たって電圧が発生するときの立ち上がりをトリガーにします。レーザーを当てた時と当てないときの、中間の電圧にトリガー電圧を設定してください。

トリガーレベルで「設定した電圧(閾値)」を通過する波形のみを取り出すことを「トリガーを掛ける」と言います。(中略)トリガーを掛ける位置を波形のどの部分にするか(立ち上がり、立ち下がり など)を設定することで、より自分が見たい(知りたい)波形を GET することができます。

https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/articles/intel/133329/

計測例(Argus C44)

実際に計測した例をご紹介します。
測定はアメリカ製のクラシックカメラArgus C44を使用しました。この機種はシャッタースピードが 10, 25, 50, 100, 300 に設定できます。それぞれ計測した結果が以下のデータです。

1/300
4msくらいですので、1/250くらいですね。ちょっと遅いのか。

1/100
6msくらいなので、1/160くらいでしょうか。こちらは少し速いようです。

1/50
12msくらいなので、1/80くらいです。これも少し早い。

1/25
25msなので、1/40です。

1/10
65msなので1/15くらいです。

結果をまとめると

Argus C44
設定値実測値
1/3001/250
1/1001/160
1/501/80
1/251/40
1/101/15
値がどこまであってるかはわかりません。

古いカメラって、油が切れてきて低速側からスローになっていくと思っていたのですが、このカメラは若干速いみたいですね。そういうものなのか分かりませんが、勉強になりました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました